虚業と実業2
昭和戦前版(1926-1945)朝日新聞紙面DBで「虚業」を全検索かけてみたら,1934年5月28日付け朝刊9面に辰野九紫による「賄賂ABC(上)」の小見出しに「虚業家の魔手」というのが1件ヒットした(1件しかヒットしなかった)。
残念ながら文字の写りが悪く判読不明な部分もあって,よく意味内容がわからないのだが,どうやら官僚腐敗の一つのケースとして怪しげな画商(虚業家?)による掛け軸の贈り物を通じて賄賂が贈られる云々という話らしい。
いずれにせよ,「虚業」という言葉自体それほど一般的ではなかった(少なくとも新聞見出しに頻出するような語句ではなかった)ことがわかる。
虚業と実業
毎日のようにメディアで垂れ流される「虚業」「実業」の二分法による「虚業」批判は,その概念規定からして間違っている。あるいは意識的に取り違えている。なんてことは日本経済思想史を少しでも勉強したことのある人にとっては,いわば「常識」。
福沢諭吉が「虚業」と「実業」の対比でもって「実業」を称揚したのは,江戸時代に蔑まれていた“商売”という概念を救い出すための工夫だったんですがね……。
結局のところ形を変えた「賎商」観は,泉下の福沢先生の意図とはまったく逆に,しかも自らの作り出した言葉によってたくましく生き残ってしまっている。

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